YE/DONDA DELUXE 4LPYEの10作目『Donda』。3度の超満スタジアムからのApple Music限定試聴イベント開催後もリリース日は何度も延期され、ようやく陽の目を見たこのアルバムは疑いようもなく素晴らしい内容だった。27曲から成る大作には(デラックス版は5曲が追加)、実際の試聴イベントで披露された曲がほぼ全曲収められ、その内幾つかはバージョン違いも多数収録された。スタジアムイベント(会場はアトランタはメルセデス・ベンツ・スタジアム、シアトルはソルジャー・フィールド)でも発表された通り『Donda』は進化し続けていた。どうやら最後の最後まで、名だたるゲスト達のパートの追加、削除したり、曲順入れ替え、音の並びの微調整をしていたようだ。参加したアーティストの多くは楽曲に正式クレジットされる事はなかったが、今作の為に現行ラップの最重要人物達を大勢集めた。リル・ベイビー、Lil Durk、リル・ヨッティー、ロディ・リッチ、ヤング・サグ、Jay Electronica、トラヴィス・スコット、ロックス、キッド・カディ、Fivio Foreign、Westside Gunn、Conway the Machine、プレイボイ・カルティ、ジェイ・Z、Shenseea、ダベイビー、故ポップ・スモーク、そしてデラックス版で話題となった「Life of the Party」で、実母について触れているANDRÉ 3000といった面々だ。前作『Jesus Is King』は、神という大きな力に屈した自分自身を描いたアルバムだった。本作は、生々しく、時に扱い難い天才的な男のその後の2年間と、世界を揺るがす様々な出来事を詰め込んだ作品だ。このアルバムのフィジカル盤の魅力は透徹したミニマムでミニマルなデザイン美意識にある。ジャケット/盤面の8面全てがDef JamやGOOD MUSICのアイコン、バーコード以外はほぼ真っ黒という代物で、異様な存在感を放つ激レア盤である事だけは疑う余地は無い。